この度株式会社メガハウスは、株式会社ハコスコ代表取締役、藤井直敬氏が会長を務めるVRコンソーシアム(VRC)に加盟致しました。 VRCは、デバイス/コンテンツ/メディア/プラットフォームの4つの領域において、VRの認知活動、技術開発、恊働を促すための検討や交流活動を行い、カンファレンスやイベントの開催を通じて積極的に活動内容を発信します。

株式会社ハコスコ 藤井直敬氏 ✕ BotsNew インタビュー
株式会社ハコスコ代表取締役、藤井直敬氏に、BotsNewについてのコメントと、VRの未来などに関するお話を頂きました。
2015/09/xx
まず、BotsNewをご体験頂いての感想はいかがでしょうか。
藤井直敬
2014年の春先ぐらいから、このジャンルの製品が世の中に出始めてきましたが、その中でBotsNewのような2眼タイプ(2つのレンズで映像を見るタイプ)は、映像コンテンツの作り方しだいで立体的にものを見ることができるので、表現の幅を広げられるという点で大きいですね。2眼タイプを好まれる方も多いです。
 一方、このような商品では、お子様については立体視の発達の時期というものがあって、ある程度の年齢制限が必要であると考えられます。そこに関して対象年齢を15歳以上に設定している点は、しっかりと配慮されていて素晴らしいと思います。
BotsNewが、手に持って覗く、という遊び方の形態をとっているという点は。
この手の製品では、たとえばバンドで頭部に固定して見るというものもありますが、必ずしもそうする必要はありません。例えば装着したまま立ったり歩いたりしてしまうと危険ですし、バンドをつけると髪の毛が乱れてしまったりもします。髪の毛については、特に女性は気になったりしますよね。
 スマートフォンを使ったコンテンツって、そんなに長時間のものは無いんですよね。だから手で持って見てもそんなに疲れない。自分が見終わって、友達に渡すときも簡単に渡せるし。他の人が何を見ているかわからないから、すごく気になって、誰かが見ていると自分も見たくなってしまうんですよね。だから手持ちだと大勢で手軽に楽しめます。
 あとは、顔をあてて覗く部分の幅の広さも親切ですね。幅が狭いと、眼鏡をかけている人は、見る時にいちいち眼鏡を外さなければならない。BotsNewは眼鏡をつけたまま見られますし、いろいろな点で非常にカジュアルに楽しめる製品になっていると思います。
本体の構造に関してはどうですか?
藤井直敬
まず、スマートフォンを挿入する位置に押さえるためのウレタンが付いているため、焦点距離がずれることなく、どんなサイズのスマートフォンでもしっかり固定できるところが良いですね。また、スマートフォン挿入位置の左右にカバーがついていて、外からの光が入り込まないようになっている。見えやすく、没入感を高める工夫がされています。かつ左右のカバー部分がちょうど手で持ちやすくなっていますね。 長期間使えるように、本体を紙製などではなく耐久性の高い樹脂製にしているところも良いですね。未使用時にレンズ部分を隠しておけるカバーも付いていて、安全性もしっかりしている。おもちゃならではの親切な設計になっていますね。
現在は、VRが盛り上がっている時期なのでしょうか?
もともとVRという分野は1960年代から考えられていて、50年ほどの歴史があります。その間、何度もVRの時代が来る、と言われてはしぼんで、を繰り返してきて。2013年にOculus Riftが登場したのが最初のインパクトでしたね。それ以降、たくさんの人が強い意志で、VRの時代を作っていこうとしています。今回は、スマートフォンがあることが大きいですね。高性能で高額なコンピュータを使わなくても良くなったことで、ユーザー数が限られることなく、一般に大きく普及する環境が整ったわけです。
VRには、エンターテインメント以外にも役に立つ活用法がありますか?
一番は「記録」だと考えています。 VRを使うと、時間も空間も超えて、皆が共通の体験をすることができます。これまでの記録は、たとえばビデオ撮影だと、撮影した人の視点しか記録されず、それを皆が見ることになります。例えば、お父さんが子供の小さいころの動画を撮影すると、お父さんが見たものだけが残ることになって、その時お母さんが見ていたものは残らないし、見逃している部分のほうが多いわけです。でも、パノラマ(全方位)で撮ってVRを体験すると、「あ、このとき後ろではこんなことが起きてたんだ」ということまで視聴できる。将来、記録はパノラマになっていくと思います。 また、それが世界中のいろいろな場所、時間で記録されることによって、ある地点でいつ何が起きたかが、時系列データになるわけですね。それが蓄積されていくと、タイムマシンのデータベースになるんですよ。現在のデータベースというものは、言葉の意味のつながりでできている。でも、時間と空間のデータを記録していけば、過去に遡るほど、そのデータに価値が出てきます。何月何日のどこに行きたい、ということがVRで叶うようになる。そこでよく周りを見たら、「これUFOじゃん」みたいな発見ができるかもしれない。子供の社会科見学も、タイムマシンのように過去の体験をさせられるかもしれません。
VRの技術は今後どのように発展していくと考えられますか?
藤井直敬
現状使われていないのはスマートフォンのカメラで、私はそちらに目を向けています。私はもともと理化学研究所で、SR(Substitutional Reality : 代替現実)という技術を開発していて、それは、現在見ている映像と、全く同じ位置で過去にとった映像を混ぜてしまうというもの。だから、過去の映像とライブ映像を合わせることで、本当はそこに人がいないのに映像上はいるように見えたり、同じ人が2人いるように見えたり、作りこんだ映像だと、突然目の前の人がゾンビになったりする。それはすごく新しい感覚。目の前にいる人が、本当はいない可能性なんて考えたことがないですよね? また、今VRと言うと、多くの人がヘッドマウントディスプレイのようなものを付けて覗き込むものだと思っていますが、それは狭い意味でのVRと捉えています。VR、つまり仮想現実ということでは今後いろいろなものが作れます。例えばプロジェクションを利用して、窓だと思っていたら、壁に映っていた映像だった、とか。そうなると、窓から見えている、普段通りのビル街の景色で、突然巨大怪獣が現れたりするかもしれない。部屋の中の絵やコップだって、本物かどうかわからないし、本物である必要もないかもしれないんです。
藤井先生は、今後VRをどのような方向に研究していきたいですか?
私は、心理実験に活かしていきたいと考えています。 今後VRが進化していくと、現実と地続きにいろいろなものが混ざってしまって、見えているものの何が本当かわからなくなるわけです。そうすると、人は動けなくなってしまうんですね。でもその後、じっとしているわけにはいかないから、それを受け入れて、動かざるを得なくなるんですよ。そして動き出すと、現実に対する認知の仕方が変わるわけです。 自分が見ているものと、他の人が見ているものは違うかもしれない。今までは同じビデオを見て、全員が同じものを見ているのだと当たり前に思っていた。でもそうじゃなくなって、「自分が見ているものは、人とは違うんだ」と考えることが当たり前になる。そうすると、通常の現実世界でも、一人ひとりが違う考え方をできるようになっていくわけです。同じ物事に対して、あの人はこう考えているけど、私はこう思う、と。私は、そうなると「人は変わる」と思っています。それは一種の、人間の進化だと思っているんです。
PROFILE
藤井 直敬(ふじい なおたか)
株式会社ハコスコ 代表取締役 理化学研究所 脳科学総合研究センター 適応知性研究チーム チームリーダー。
1965年広島県生まれ。東北大学医学部卒業。同大医学部眼科学教室にて初期研修後、同大大学院に入学、博士号取得。1998年よりマサチューセッツ工科大学(MIT)、McGovern Instituteにて研究員。2004年より理化学研究所象徴概念発達研究チーム。2008年より現職。主要研究テーマは、適応知性および社会的脳機能解明。